生き物紀行水棲昆虫編

湘南アクアリウム

 
最新更新日
H21年6月30日

目次
第1話:「生き物に魅せられて」:私を生き物の世界に曳きづりこんだオンジョ

第2話:「コシマゲンゴロウ」

第1話:「生き物に魅せられて」:私を生き物の世界に曳きづりこんだオンジョ

 先日「楽しい熱帯魚」編集部の吉武氏より「毎月約100行の「コラム」を書いてもらえませんか。」という執筆依頼がきた。
  テーマは「水生昆虫や日本産淡水魚だったら何でも」という。なんと壮大なテーマであろうか、何から手をつけていいやらーーーーー、あれこれかなり迷った。でも考えてみたら、10年でも20年でも続けられそうなテーマでもあると気付いた。ならば第1話はこれしかない!私を生き物の世界に引きずり込んだオンジョだ。
  私の生き物好きは4歳の頃から始まったようだ。4歳までは神奈川県の平塚、5歳は北海道の札幌、6歳からは東京都の渋谷に私は生息していたため、子供の頃の記憶が何処でのものかがハッキリしている。平塚時代の頃は家の前に原っぱがあり、夏になるとアカトンボがいっぱいいて、4歳の私でもカンタンに網で採れた。取れたといっても、ただ網を振り回せばアカトンボが勝手に入ってきたという密度だったのかもしれない。
 そんなおり、当時小学校6年の兄がでっかいトンボを捕まえてきた。オンジョだ!!初めて見たとき、私はうっとりとしてしまった。体全体が緑に輝いている。目も緑だ。腹の下は真っ青、さらにビックリしたのは、羽の中央があめ色がかっていて他のトンボとは明らかに異なり風格を感じてしまう!なんと綺麗なトンボであろうか!!人差し指と中指で翅を挟まれているオンジョは体を力強く振り、大きな口を開けて私を威嚇する。その形相たるやすさまじく鬼神のように威厳があった。そっと手を近づけると「触るな、手を食いちぎられるぞ!」−−−−−と兄の一喝
  ビク!っとして思わず後ずさる。そばにいたオンブバッタを捕まえ、口に近付けると、なんとオンジョは頭からむしゃむしゃと食べ始めたではないかーーびっくり!
 兄はオンジョの体に糸を巻きつけ、もう一方は両手を広げた長さで切り、その先端を庭にあった柿の木に縛った。手に持っていたオンジョをそっと掲げて放すと、力強く飛び回っていた。
  「面白い!」
 私も真似をして傍にいたアカトンボを捕まえ、糸で縛ったら
  「グシャ」−−−−なんと瞬殺してしまった。なんとトンボの体は柔らかいのであろうか、力加減の解らなかった私はショックを受けたが、懲りずにまたアカトンボを捕まえて糸で軽く縛って飛ばしたが、へなへなへなと地面に落ちてしまった。
  「アカトンボじゃ無理だ!糸が重いんだよ」−−−−−と兄
  隣ではオンジョが元気に飛んでいた。トンボの王様だ!−−−と感激!
 翌日、兄が「オンジョを採りに行こうか」と言ってくれた。
  実は渋々。昨日私はオンジョを採りたいとダダをこいたのだ。ガキのダダは半端じゃなく、嫌々ながらの行軍となったのである。ガキのおもりに1人では危険と感じたのか、仲間2人を連れて4人で行くこととなった。
  「何処に行くの?」ーーーと聞くと
  「パイロット」−−−−???−−訳わかんない!
  (10年くらい経って、母に「パイロットって何?小さい頃その池でオンジョを採ったんだけど」と聞くと、母は「ああ、たぶん、パイロット万年筆の敷地内の池のことじゃないの」との事であった。今はどうなっているのだろう?)
 着いてみると一面草村で自分より遥かに背の高い草(ススキだったと思う)を掻き分け掻き分けーーーこんなところにオンジョがいるの?と思いつつも兄達の後を必死に追っていた。するといきなり大きな池が現れて、いろんなトンボが飛んでいるではないか。その中でも、なんといってもオンジョが一番大きい!それに速い早い!
  「来たぞ!そっち行った、そっち行った」−−などと声を掛け合いながら構える。皆真剣でピリピリしていたが、そのうち兄が一匹を採ると、なんとまた糸を付け始めたではないか!こんなとこで遊ばなくてもいいからもっと採ってよーーーと思いつつ兄は片方の糸の先を持ってオンジョをグルグル振り回し始めたではないか!すると一瞬にして、他のオンジョが糸の付いたオンジョに絡まってガシャガシャともみ合った、−−と、すかさず兄が片方の網で2匹とも一緒に捕まえたのだ。 え!!なんでなんで!目がまん丸になってしまった。魔法みたい! (この方法は「トンボ釣り」と言われ、メスを使用する。オスでは意味が無い。オスがメスを追いかけ空中で交尾をする習性を利用したものであるが、まー4歳のガキんちょには当時解る道理も無く、不思議・不思議の世界であった。)その後同じ方法で何匹かオンジョを捕まえて意気揚々と帰った記憶がある。(何匹とったかは記憶に無いが)。
 これが私を生き物好きにしたきっかけとなる事件である。生き物好きの人は、そんな生き物との出会いがきっかけとなった記憶を持っていることだろう。
 「オンジョ」とは平塚の方言で標準和名ギンヤンマの事である。藤沢ではオンジョとは言わない。大学時代の各地の友人に聞いてみたが「オンジョ」という表現は知らないという。−−−−ところが、ところがである。私が「湘南アクアリウム」を開いて4〜5年たった頃、店内に飛んでいるギンヤンマを見た50代と思える男性が
 「あ!オンジョが飛んでる!」ーーーと叫んだのである。 懐かしさと嬉しさで、
 「え!お客さん、オンジョ知ってるの!」−−−と聞くと、
 「子供の頃は良くオンジョ採りに言ったよ!」−−−と返ってきた。
 「あのー、お客さんは平塚の方ですか?」−−−−と聞けば、なんと
 「いや?私は東京生まれの東京育ちだよ。」−−−東京でもオンジョというそうだ。
 オンジョは平塚だけの方言ではなかったのだ!!−−−−やった!!
 店内にいるヤゴの説明で話が弾んだあと、最後に
 「いやー、トンボが飛んでる店なんて初めて見ましたよ!」ーーと言って帰っていかれた。嬉しさ100倍である。ちなみに、オニヤンマのことは、平塚ではオオシマトンボと呼んでいた。 これからの私のライフワークの1つに「オンジョの方言マップ作り」が加わりそうで楽しみだ。

第2話「コシマゲンゴロウ」

このゲンゴロウはシマゲンゴロウの1種で体長1cm程度しかない。

それでも、サイズは中型ゲンゴロウに入る。

では小形ゲンゴロウとは?ーーーーーの答えはまた後日として

数年前、お客様のY氏から、

「マメゲンやコガムシがいる場所があるよ、近いから行って見る?」

という話に、もちろん,乗り乗りで、すぐに出かけていった。

案内されて目的地に到着すると、そこは水田地帯であった。まだまだ神奈川県の藤沢近郊にはこのような

田園風景が結構見られる。その田圃では稲が15cmくらいに育っており、

オタマジャクシが泳いでいた。生息地まで少し歩くのだが、途中休耕田のような場所に水がはっており、

そこでいきなりハイイロゲンゴロウが多数泳いでいた。

どこからか飛んで来たのであろう。数日前にはいなかったという。

ここの田圃には側溝があるのだが、残念ながらすべてコンクリートのU字溝になっている。

「ここはダメだな!」と私がいったら、

「いやいや、ここにいるんですよ」ーーーーという。

「この先に草が覆いかぶさっている場所が数箇所あって、

そこにいますから。」------------水生昆虫も環境に合わせてるんだなーと関心した。

ポイントにつくと、-------------水深が5cm程度しかなく、止水であった

しかもエノコログサ等の陸上に普通にある草が垂れて水の中に入っており、

どう見ても、「え!こんな所に!」-------と考え込む。

とにかくタモ網を入れてみると、なんと、コシマゲンゴロウとマメゲンゴロウ・ヒメゲンゴロウが

入ってきた。

驚いたのは私よりY氏である、

「え!コシマゲンが採れたんですか??この前はいなかったのにな〜!!」

結局その周辺では10数頭のコシマゲンが見つかり

それ以外にもヒメゲン・マメゲン・チビゲン・ヒメガムシ・コガムシ等が見られた。

コガムシは幼虫も見つかり、思った以上に生物層が豊かなので少々ビックリ!

ここで、不思議な点がいくつか出てきた。

まず、コシマゲンゴロウはいつからここにいたのか?

2週間前には、幼虫も成虫も見つからなかったという。

蛹の期間は7日から10日前後であろうから、幼虫もいなかった事を考えると

他地域から飛来したようだが。いったい何処から???ということになる。

ゲンゴロウ類は止水(池・沼・田圃・側溝)に生息するグループと流水(川)に生息するグループがあり、

コシマゲンゴロウは止水域に生息する。この仲間は越冬する場所と繁殖する場所が異なる種類が多い。

ある農家の方にお話を聞くチャンスがあり、その農家の方の田圃の側溝に網を入れると

沢山の種類の水生昆虫が見られたが、実は昨日水を入れたばかりで、一昨日には水は無かったという。

「え!!」-------頭をハンマーでたたかれたようなショックを味わった。
信じられない思いだった。

その側溝はたったの1日で無から水生昆虫天国へと変貌したことになる。

水生昆虫たちは、どのようにして、田圃に水が入った事を知るのであろうか!!

本当に不思議、不思議、の物語りである。私が水生昆虫に魅せられた大きな理由は昆虫の中で

最もよくわからない不思議な生態を持つからである。

さて、話を戻して、

ここのコシマゲンゴロウも繁殖活動をするために、この側溝に来たのであろう。

次に、不思議なのはコシマゲンゴロウが10数頭見られたこと。

「え!なぜそんなことが不思議なの??」ってか。

この普通種であるはずのコシマゲンゴロウの多産地を私はあまり知らないのだ。1箇所で10数頭見つかるのは

私にとって、実は珍しいケースである。コシマゲンゴロウはどこでも良く見かけるのだが、

どういう訳か、いつも、数個体しか確認できなかった。他の普通種のゲンゴロウは必ずといっていいが多産地がみつかる。

(平成20年はコシマゲンゴロウの当たり年のようで各地でコシマゲンが多産したようだ。)

藤沢近郊でこれだけのコシマゲンに出会えたのは嬉しい限りであるが、

何故環境の悪化している藤沢に多産しているのであろうか?不思議だ。

皆さんも身近な水辺のある場所で、よく観察してみてください。

意外な水生昆虫に出会えるかもしれませんよ

 

トップページへ